舌小帯短縮症 Glossary Ankyloglossia
舌小帯短縮症とは
舌の裏側の真ん中に口の底に向かっているヒダを舌小帯といいます。
このヒダが生まれつき短いことがあり、これを舌小帯短縮症あるいは舌小帯強直症といいます。
どの程度の症状で治療が必要か
小児や児童の場合も含め、舌小帯が短い場合には、舌を前の方に突き出すとき、舌の先端にくびれができ、ハート型またはW字型の舌になります。
乳児の場合、舌先になればなるほど、舌小帯が短ければ短いほど、哺乳力が弱く、体重増加が悪くなりますが、このような場合には、小児外科などで、新生児、乳児期に切っておくほうが良いと考えます。
舌の先を上の歯の裏の歯肉に付けることができたり,舌を出したときに舌の先の中央がハート形にくびれなければ,手術の必要はありません。
手術が必要な場合は,舌小帯が極端に短いために、タ行、ラ行、サ行の発音がうまくいかなくなったり、英語などの外国語の発音が上手くできないなどのことがあれば、治療の対象になると思われます。
治療
手術は局所麻酔をしたうえでメスなどを用いて舌小帯を延長します。
切る部分は粘膜なので、適切に手術が行われると出血などもほとんどなく、術後の痛みもあまりありません。
一方で、舌尖下面の前舌腺、口腔底の舌下腺や舌下腺開口部を傷つけないよう注意が必要です。
開口部の処理を誤ると唾液の排出障害を生じます。術者は細心の注意を払わなければなりません。
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- 舌小帯強直(短縮)症の手術
(出血などの症例画像あり) -
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STEP.01
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STEP.02
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STEP.03
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STEP.04
小帯を延長するために舌を上下にけん引しながら、メスで小帯を切離し、延長する。
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- 舌小帯強直(短縮)症の手術
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- 舌小帯強直症 メスでの切開
(出血などの症例画像あり)
※他院での術後に排出障害を生じた症例写真あり -
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STEP.01
舌小帯の短縮を認める -
STEP.02
舌尖部に糸をかける
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STEP.03
舌を糸で牽引して舌小帯にメスを入れて切開する -
STEP.04
切るという感じではなくメスを当てることで切開部が広がっていく感じである
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STEP.05
舌小帯の下方では、舌下小丘(ワルトン氏管の開口部)に注意する -
STEP.06
メスで粘膜をそぐような力加減で使うことも大切である
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STEP.07
出血が気になるときは電気メスを用いた止血も有効である -
STEP.08
縫合する前に、舌の伸展を舌にかけた糸を牽引して確認する
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STEP.09
縫合は舌下小丘に十分気を付けて行い、下方までは縫合しない -
STEP.10
患者さん自身で前突、挙上ができることも確認して手術を終える
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- 舌小帯強直症 メスでの切開
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- 舌小帯強直症 電気メスでの切開
(出血などの症例画像あり) -
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STEP.01
舌小帯の短縮を認める -
STEP.02
舌を糸で牽引して舌小帯に電気メスを入れて切開する
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STEP.03
電気メスを当てることで切開を行う。舌下小丘(ワルトン氏管の開口部)に注意する -
STEP.04
電気メスを当てることで切開部が広がっていく感じである
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STEP.05
止血をしながら切開を進める -
STEP.06
縫合は舌下小丘に十分気を付けて行い、下方までは縫合しない
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- 舌小帯強直症 電気メスでの切開
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- 他院で舌小帯手術を受け、唾液排出障害を生じた症例
(出血などの症例画像あり) -
舌下小丘
ワルトン氏管の開口部が唾液排出障害のために同部が腫れているのがわかる。
右側はどうにか唾液腺マッサージで唾液の流出が確認できるが左側では唾液排出が認められず、顎の下(顎下腺部)の有痛性腫脹がみられる。
唾液腺の開口部を再度設置する手術が必要である。術後の瘢痕も強く、舌の伸展という元来の目的も達成されていない。
- 他院で舌小帯手術を受け、唾液排出障害を生じた症例